「奈良で、障害のある方が安心して暮らせるグループホームをつくりたい」
そんな思いで開業を考え始めたとき、物件探しや職員募集など、何から取りかかればよいのか迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
障害者グループホームの開業では、地域のニーズ、物件、人員配置、資金計画、指定申請をつなげて準備することが大切です。
特に、物件を契約する前に、その場所で予定する支援を実現できるか確認することが、手戻りを防ぐポイントになります。
この記事では、奈良県・奈良市の手続きの違いと、2026年の制度見直し、2027年からの総量規制も含めて、開業までの流れを整理します。
※2026年9月29日時点で確認できた公表資料に基づきます。本文では、施行済みの制度、公布済みで施行前の改正、検討段階の内容を分けて記載しています。
1.障害者グループホームは、日々の暮らしを支えるサービスです
障害者グループホームの制度上の名称は「共同生活援助」です。
障害のある方が地域で共同生活を送りながら、相談や日常生活上の援助、必要な介護などを受ける障害福祉サービスで、主に次の3つの類型があります。
| 類型 | 支援の特徴 |
|---|---|
| 介護サービス包括型 | 事業所の職員が、日常生活上の援助と必要な介護を提供する |
| 日中サービス支援型 | 日中を含めて常時の支援体制を整え、重度化・高齢化などに対応する |
| 外部サービス利用型 | 日常生活上の援助は事業所が行い、介護は委託先の居宅介護事業者が提供する |
類型によって、人員配置や運営上の要件が異なります。最初に「どのような方に、どのような暮らしと支援を提供するか」を考えましょう。厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン」
例えば、開業計画では次のような場面まで想像しておくと、必要な準備が見えてきます。
- 平日の日中は、仕事や通所先へ出かける方が多いのか
- 休日や通所先を休んだ日は、どのように過ごすのか
- 食事、入浴、服薬、通院にどの程度の支援が必要か
- 夜間に体調が変化したとき、誰が対応するのか
- 本人の希望や生活習慣を、支援にどう反映するのか
部屋数や家賃だけで計画を決めず、入居する方の生活から考えることが出発点です。
2.まず確認したい、2027年からの総量規制
グループホームの対象追加は、公布済みです
共同生活援助を総量規制の対象に加える改正命令は、2026年3月31日に公布され、2027年4月1日に施行されます。
総量規制とは、障害福祉計画に定める必要量に達している場合など、計画の達成に支障が生じるおそれがあるときに、指定権者が新たな指定をしないことができる仕組みです。
全国のグループホームの新規開設が、一律に禁止されるという意味ではありません。国の通知では、強度行動障害や医療的ケアなど、地域で個別のニーズが高い方への対応にも留意するよう示されています。厚生労働省・2026年3月31日公布通知(WAM NET掲載)
奈良での開業には、地域ごとの運用確認が必要です
奈良市が公表している2025年4月1日から2027年3月31日までの総量規制は、「生活介護」と「就労継続支援B型」が対象です。この案内を根拠に、グループホームも現在すでに規制されていると判断することはできません。奈良市「総量規制の実施について」
一方で、2027年4月以降の開業を考える場合には、国の改正を踏まえて、奈良県・奈良市の具体的な運用を確認する必要があります。
開設予定地と希望時期を伝え、次の点を相談しましょう。
- その地域で、新たなグループホームの指定を受けられる見込みがあるか
- どのような支援を必要とする方の住まいが不足しているか
- 総量規制の対象区域や、例外的な取扱いが設けられるか
- 開業後の住居追加や定員増加にも影響があるか
物件を確保したことや、事前相談を始めたことだけで、将来の指定が保証されるわけではありません。 開業予定時期に適用される取扱いを、投資の前に確認しておきましょう。
3.奈良で開業するまでの基本的な流れ
準備は、次の順番を基本に、相互に調整しながら進めます。
- 地域のニーズと支援方針を整理する
- 開設地域・サービス類型・定員を検討する
- 法人、人員、資金計画の見通しを立てる
- 候補物件について福祉・建築・消防などに相談する
- 契約条件を確認し、物件契約・改修・採用を進める
- 指定申請、書類補正、現地確認に対応する
- 指定後、利用契約や支援体制を整えてサービスを開始する
物件だけ、人員だけを先に確定すると、後から計画が合わなくなることがあります。
例えば、夜間の支援が多く必要な方を受け入れる計画であれば、職員の配置だけでなく、居室の位置や避難のしやすさ、運営費にも影響します。
4.奈良県と奈良市では、事前相談の進め方が異なります
グループホームの所在地が奈良市内か、それ以外かによって、指定申請の窓口が変わります。
| 開設する場所 | 指定申請の窓口 |
|---|---|
| 奈良市内 | 奈良市の障がい福祉担当窓口 |
| 奈良市以外の奈良県内 | 奈良県の障害福祉担当窓口 |
奈良県:必要書類をそろえ、書面で事前相談
奈良県では、書面による事前相談が案内されています。
物件の契約前に必要書類を準備し、事前相談を行うようにしましょう。
相談では、事前相談シート、各室の用途や面積を記載した平面図、勤務体制、サービス管理責任者予定者の実務経験・研修関係書類、建築物関連法令の確認資料などを準備します。
県は、図面だけでは判断できない事項があることも案内しています。改築を伴う購入・賃貸契約前などの相談では、該当する相談シートと図面を合わせて提出することが大切です。奈良県「指定申請について」
奈良市:来庁して相談するときは、必ず予約を
奈良市で面談による事前相談を行う際は、必ず電話またはメールで予約し、担当者に確認しましょう。電子メールによる相談も案内されています。
市は事前相談を申請の必須条件とはしていませんが、基準を満たさない申請や必要書類が不足する申請は受理できないとしています。開業準備では、契約前から相談を進めることをおすすめします。
指定申請の期限は、原則として指定希望月の前々月末日です。例えば、4月1日指定を希望する場合は2月末日が申請期限になります。来庁して申請書類を提出する際にも予約が必要で、審査では現地確認も行われます。奈良市「新規指定及びサービス追加をお考えの方へ」
申請書類は、その時点の様式で準備しましょう
奈良県の新規指定申請は、2026年4月1日から国の標準様式へ完全移行しています。
以前の申請書類をそのまま使わず、最新の必要書類一覧と提出期限表を確認しましょう。また、県では事前相談後に平面図などを変更すると、事前相談からやり直しとなる場合があります。奈良県「新規指定」
5.物件契約前には、福祉・建築・消防を確認
「住宅として使われていたから、グループホームにも使えるはず」とは限りません。
奈良県も、設備基準に加えて、建築基準法や消防法などへの適合を関係窓口に事前確認するよう案内しています。奈良県「事業者指定基準」
居室の広さと、暮らしやすさを確認する
居室は原則1人部屋で、面積は収納設備等を除いて7.43㎡以上が基本です。居間や食堂などの交流できる設備も必要になります。厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン」
不動産広告の「○畳」という表示だけで判断せず、図面と実測で確認しましょう。
実際の生活を考えると、次の点も大切です。
- ベッドや私物を置いても、移動や介助ができるか
- 入浴やトイレで、本人のプライバシーを守れるか
- 階段や段差が、利用予定者の負担にならないか
- 夜間に職員が対応しやすい配置か
- 火災時に、利用者の状態に応じた避難ができるか
建築・消防には、利用者像も伝える
相談時には、住所と図面に加えて、予定定員、使用する階、支援内容、夜間体制なども伝えましょう。
建築・開発関係では、建物の用途や土地の制限、必要な手続き、改修内容を確認します。消防関係では、必要な設備、避難方法、届出や検査について確認します。奈良市は、食事の調理・提供についても関係課への確認を案内しています。奈良市「新規指定及びサービス追加をお考えの方へ」
物件契約では、貸主の使用承諾に加え、必要な工事ができるか、費用を誰が負担するか、指定を受けられなかった場合にどうするかまで確認しておくと安心です。
6.奈良で特に確認したい、併設と日中サービス支援型の取扱い
日中活動の事業所を併設する場合
生活介護や就労継続支援などの事業所と、グループホームを同じ敷地に設ける場合には、独自の確認事項があります。
奈良市は、必要設備をそれぞれ確保すること、構造や運営の独立性を保つこと、勤務体制を明確にすることなどを条件としています。同一建物の場合には、専用の出入口などの条件もあります。
また、入居者に併設事業所の利用を強制せず、本人が日中活動先を選べるようにすることも求めています。隣接地でも、一体的に利用できる土地は同一敷地として扱われる場合があります。奈良市「日中活動系サービス事業所と共同生活援助の併設について」
奈良県にも併設に関する通知と申請書があります。併設を予定する場合は、間取りや職員の兼務を確定する前に相談しましょう。奈良県「事業者指定基準」
日中サービス支援型は、市町村との調整も早めに
日中サービス支援型では、協議会等への報告・評価に関する手続きにも注意が必要です。
例えば橿原市は、事業開始前に1回、開始後は年1回の評価を行う取扱いを公表しています。橿原市「日中サービス支援型共同生活援助の報告・評価について」
県への指定申請だけを予定表に入れるのではなく、開設する市町村に、協議会への説明や評価の時期、必要書類を早めに確認しましょう。
7.人員配置は、実際の一週間の生活から考える
グループホームでは、管理者、サービス管理責任者、世話人、類型や利用者の状態に応じた生活支援員などの体制を整えます。必要な配置は、サービス類型や利用者数、障害支援区分などによって異なります。厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン」
採用前には、サービス管理責任者予定者の実務経験や研修修了状況を確認し、配置できる見通しを立てておきましょう。
勤務表をつくるときには、平日の日中だけでなく、朝夕、夜間、土日祝日も並べて考えます。
例えば「夜間に一人が通院することになったとき、ホームに残る方を誰が支援するか」「職員が急に休んだとき、代わりに入れる人がいるか」まで確認しておくと、採用人数や必要経費の見積りが現実的になります。
2027年度に向けた管理者要件の見直しにも注意
厚生労働省の2026年6月の審議会資料では、2027年4月から、管理者に障害者支援等の実務経験と管理者研修の修了を求める案が示されています。
その案では、新規開設の管理者について3年以上の実務経験を求め、研修には経過措置を設ける内容となっています。これは、前述の公布済みの総量規制とは区別し、今後の省令・通知と研修案内を確認すべき事項として押さえておきましょう。厚生労働省・第156回障害者部会「障害福祉サービスの質の確保について」
2027年度以降の開業では、管理者候補の経験内容も早めに整理しておくことをおすすめします。
8.資金計画には、2026年の報酬見直しを反映する
2026年6月1日以降に新規指定された介護サービス包括型・日中サービス支援型には、原則として、基本報酬の所定単位数を972/1000とする応急的な特例が適用されています。
重度障害者への支援や一定の地域などには配慮措置がありますが、具体的な算定要件を満たすか確認が必要です。この特例は2027年度報酬改定までの措置として示されています。厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項」19~21頁
古い報酬単価による収支例を、そのまま開業計画に使わないようにしましょう。
資金計画では、少なくとも次の費用を整理します。
| 費用の区分 | 検討する内容 |
|---|---|
| 開業前の費用 | 法人設立、物件取得・賃借、改修、消防設備、家具・備品、採用など |
| 毎月の費用 | 人件費、家賃、水道光熱費、保険、通信費、車両費など |
| 予備資金 | 入居が予定より遅れた場合、追加工事、職員の追加採用など |
収支は、満床時だけでなく、入居が段階的に増える場合でも試算しておきます。サービス提供から報酬の入金までの時間も見込み、支払いが先に発生する期間を乗り切れる資金を準備しましょう。
9.開業前から、運営の仕組みも準備する
2026年2月に、厚生労働省は共同生活援助の運営・支援に関するガイドラインと、新規指定等の留意事項を公表しました。
国の通知では、事業者の知識や経験、支援内容などを総合的に確認することが示されています。面談等で確認する場合には、代理人だけでなく、法人代表者や管理者、サービス管理責任者予定者など、実際に運営を担う方に確認する取扱いも示されています。厚生労働省・2026年2月26日通知
そのため、書類作成と並行して、次のような場面の対応も話し合っておきましょう。
- 本人の希望を、日々の支援や個別支援計画にどう反映するか
- 食費などの実費や預り金を、どう管理・説明するか
- 虐待防止、身体拘束の適正化、感染症や災害への対応をどう実行するか
- 苦情や事故が発生したとき、誰が対応・報告するか
- 職員研修や記録の点検を、いつ、誰が行うか
また、地域連携推進会議など、外部の目を入れて運営の透明性を高める取組は、2025年度から義務化されています。適用される取扱いを確認し、会議や住居訪問の準備も年間予定に組み込みましょう。厚生労働省「地域連携推進会議の手引き」掲載ページ
10.開業準備のチェックリスト
計画を進める前に、次の点を確認してみてください。
- □ 地域で求められる住まいと支援の内容を調べた
- □ サービス類型と利用者像を整理した
- □ 開業予定時期の総量規制の取扱いを相談した
- □ 法人格と定款・登記上の事業目的を確認した
- □ 物件契約前に、福祉・建築・消防などの確認を進めた
- □ 併設や協議会評価など、地域ごとの手続きを確認した
- □ 管理者・サービス管理責任者などの確保に見通しがある
- □ 夜間・休日・欠勤時を含む勤務体制を検討した
- □ 最新の報酬と、入居が進まない場合の収支を試算した
- □ 申請期限から逆算し、改修・採用・書類準備の予定を立てた
すべてを一度に決める必要はありません。大きな契約や支出をする前に、指定の見通し、物件、人員、資金の条件を一つずつつなげて確認することが大切です。
奈良でのグループホーム開設をお考えの方へ
グループホームの開業準備は、利用者の方の暮らしを具体的に思い描くところから始まります。
その思いを形にするために、地域のニーズ、制度上の条件、物件、人員、資金計画を整理していきましょう。
みのり行政書士事務所では、奈良で障害福祉事業の開設をお考えの方に向けて、開業準備や指定申請に関するご相談をお受けしています。
「候補の物件があるけれど、契約してよいか迷っている」
「どの窓口に、何を相談すればよいか分からない」
「2027年の制度変更を踏まえて、準備を進めたい」
そんな段階から、一緒に確認していきましょう。

