「定員10人なら、職員は何人必要ですか?」
「保育士の資格があれば大丈夫?」
「児童発達支援管理責任者は、管理者と兼務できますか?」
児童発達支援や放課後等デイサービスの開業準備では、物件と並んで、人材の確保が大きな課題になります。
人員配置で確認するのは、採用する人数だけではありません。**「どの要件を満たした人が、どの時間帯に、どの仕事を担当するか」**まで整理することが大切です。
この記事では、開業前に押さえたい基本と、2026年の変更点、2027年度に向けた動きを解説します。
※制度確認日:2026年9月29日
※主に、児童発達支援センター以外の児童発達支援事業所と、主として重症心身障害児を対象としない放課後等デイサービスを想定しています。医療的ケアへの対応、多機能型などは、別途確認が必要です。
1.まずは、三つの役割を押さえましょう
基本となるのは、管理者、児童発達支援管理責任者、児童指導員・保育士です。
| 職種 | 配置の基本 |
|---|---|
| 管理者 | 事業所ごとに配置。原則として管理業務に専従し、支援に支障がない場合に兼務が認められます |
| 児童発達支援管理責任者(児発管) | 1人以上。そのうち1人以上は専任かつ常勤 |
| 児童指導員・保育士 | 支援の単位ごとに、提供時間帯を通じて必要人数を配置。そのうち1人以上は常勤 |
児童指導員・保育士の基本の人数は、次のとおりです。
| その単位で支援する子どもの人数 | 必要な児童指導員・保育士の合計 |
|---|---|
| 10人まで | 2人以上 |
| 11~15人 | 3人以上 |
| 16~20人 | 4人以上 |
10人を超える場合は、5人またはその端数ごとに1人を追加する考え方です。なお、この表は定員を超えた受入れを認めるものではありません。
一定の条件を満たす機能訓練担当職員・看護職員を人数に含められる場合もありますが、その場合も児童指導員・保育士が半数以上必要となるなど、条件があります。
2.「2人採用したから大丈夫」とは限りません
例えば、サービス提供時間を14時~17時とする事業所で、必要な資格・要件を満たす職員2人を採用したとします。
しかし、1人が16時に退勤する予定であれば、16時~17時の配置をどうするか確認が必要です。
このように、採用人数をそろえることと、必要な時間帯の配置を満たすことは別です。
開業前には、職員ごとの勤務予定を一日の時間軸に並べてみましょう。
- 子どもを受け入れている時間に、必要な職員がそろっているか
- 休憩を取る時間をどう組むか
- 送迎で職員が外出する間の支援体制はどうするか
- 土曜日や長期休暇にも対応できるか
- 職員が休んだ場合に、代わりに勤務できる人がいるか
支援内容や送迎の組み方も含め、指定担当窓口に勤務予定表を見てもらうと、確認すべき点が具体的になります。
「常勤」と「正社員」は同じ意味ではありません
人員基準上の「常勤」は、雇用契約の名称だけで決まるものではありません。事業所で定める常勤職員の勤務時間を満たすか、という観点で確認します。
一方、「常勤換算」は、対象業務に従事する勤務時間を、常勤職員の勤務時間に換算して人数を計算する方法です。
常勤換算の合計が足りていても、サービス提供時間中の必要人数がそろっているとは限りません。
時短勤務などの特例もあるため、通常の取扱いと特例を分けて確認しましょう。奈良市「指定申請のてびき」用語の定義
3.児童指導員は、職歴の名前だけでは判断できません
「福祉施設で働いていた」「子どもと関わる仕事をしていた」という経験だけで、必ず児童指導員として配置できるわけではありません。
児童指導員の要件には、社会福祉士・精神保健福祉士などの資格、大学等で修めた課程、教員免許、児童福祉事業での実務経験など、複数のルートがあります。それぞれに条件があるため、採用予定者がどの要件に該当するかを確認します。
現行の規定には、こども家庭ソーシャルワーカーの資格を有する者も含まれています。古い資格要件の一覧だけで判断しないようにしましょう。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準・第43条
確認する書類の例は、次のとおりです。
- 保育士証や各種資格証
- 教員免許状
- 卒業証明書、履修内容を確認できる書類
- 実務経験証明書
「採用してから証明書を集めよう」と考えていると、開業直前に確認が間に合わなくなることもあります。採用の検討段階で、必要書類を整理しておきましょう。
4.児発管は「研修を受けたか」だけでなく、配置要件を確認
児童発達支援管理責任者については、実務経験と研修修了の両方を確認する必要があります。
基礎研修の修了だけで、直ちに児発管として配置できるとは限りません。実践研修までの実務経験、更新研修の受講状況、経過措置や特例の適用なども含めて確認します。児発管の要件を定める告示
採用予定者には、早めに次の資料を用意してもらいましょう。
- これまでの職歴・業務内容が分かる資料
- 実務経験証明書
- 基礎研修、相談支援従事者初任者研修の講義部分、実践研修などの修了証
- 更新研修の修了証など、現在の配置資格を確認できる資料
奈良県の事前相談でも、児発管就任予定者の経歴書、実務経験証明書、研修修了証の写しなどが求められています。奈良県「新規指定申請」
管理者との兼務は、業務の実態まで確認しましょう
管理者と児発管を兼務する計画は、管理・支援に支障がないかを含めて確認します。
また、管理者との兼務が認められることと、児発管を児童指導員・保育士の必要人数に重ねて数えられることは別です。
「この人が全部担当すれば人数が足りる」と考えず、役割と勤務時間を分けた表で、指定担当窓口に確認しましょう。
5.基本の人員配置と、加算のための配置を分けて考える
職員を多く採用すれば、どの加算でも取れるというわけではありません。
例えば、児童指導員等加配加算や専門的支援体制加算では、基本の配置に加えて、職種、勤務形態、経験年数などの要件を確認します。2024年度改定では、児童指導員等加配加算の評価方法などが見直されました。奈良市掲載・2024年度改定資料
採用計画は、次の順序で考えると整理しやすくなります。
- 指定を受け、日々の支援を行うための基本配置を組む
- 子どもの支援と職員の休暇・研修に必要な余裕を考える
- 追加配置について、算定できる加算と要件を確認する
- 加算を算定できない場合も含め、人件費と収支を確認する
同じ職員を複数の配置要件にどう数えるかは、加算ごとの規定によります。求人を出す前に、取得したい加算と必要な資格・経験を整理しておきましょう。
6.2026年の変更で、開業前に確認しておきたいこと
人員不足に関する「減算の猶予」は、条件付きの取扱いです
2026年5月28日付の通知では、突発的で予測が難しい事情による一定の人員不足について、減算適用を猶予する特例が追加されています。
対象となるのは、必要人数からの減少が1割の範囲内であることや、求人等による人材確保の取組、指定権者への報告などの条件を満たす場合です。
これは人員基準そのものを緩和したものではありません。最初から職員が足りない状態で開業するための制度として考えないようにしましょう。
適用の可否は自己判断せず、事情が生じた段階で指定担当窓口に相談する必要があります。こども家庭庁・2026年5月28日改正通知(25~27ページ)
採用計画には、2026年度の報酬改定も反映しましょう
2026年度には、福祉・介護職員等処遇改善加算の拡充が行われています。また、同年6月1日以降に新規指定される児発・放デイについては、配慮措置に該当する場合を除き、応急的な基本報酬単価が適用されます。
人員基準を満たしていても、以前の報酬単価で収支を計算すると、採用計画に影響する可能性があります。開業時点で適用される報酬を確認しましょう。こども家庭庁・2026年度改定概要(3ページ、20ページ以降)
7.2027年度に向けた変更は、どこまで決まっている?
2027年に関する情報は、次のように分けて読むことが大切です。
報酬改定:現在は検討段階
厚生労働省では、2027年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討が進められています。
ただし、2026年9月29日時点で確認した一次資料では、本記事で扱う一般的な児発・放デイについて、基本の配置人数を変更する確定済みの規定は確認できませんでした。
会議資料に掲載された論点や団体からの要望を、そのまま決定事項として扱わないことが大切です。厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」
新しい研修体系:2027年度以降の本格実施を見据えて準備
こども家庭庁の検討会報告書では、障害児支援の人材育成について、基礎・実践、リーダー、コア人材という段階的な研修体系が示されています。
2027年度以降の本格実施を見据え、段階的に進める方向です。ただし、この情報だけから「2027年4月から全職員に新資格が必要になる」とは判断できません。対象者、実施時期、受講方法などの正式な案内を確認する必要があります。こども家庭庁「障害児支援における人材育成に関する検討会報告書」概要
開業準備としては、研修に参加できる勤務体制や、事業所内で学びを共有する時間も考えておきたいところです。
一部の児童発達支援センター:経過措置の期限に注意
本記事の主な対象とは異なりますが、旧医療型など一部の児童発達支援センターには、人員基準について2026年度末までの経過措置が示されています。
該当施設は、2027年4月以降の対応を個別に確認してください。これは、一般的な児発・放デイすべての配置人数が変わるという意味ではありません。こども家庭庁・2024年度改定概要(203ページ)
8.採用を進める前のチェックリスト
- □ サービスの種類、定員、提供時間を決めた
- □ 採用予定者の資格・実務経験を証明書で確認した
- □ 児発管の研修・更新状況を確認した
- □ 管理者と児発管など、兼務予定を整理した
- □ 平日・土曜日・長期休暇の勤務予定を作成した
- □ 休憩、送迎、休暇、研修中の支援体制を考えた
- □ 基本配置と加算のための配置を分けて確認した
- □ 開業時点の報酬制度で人件費と収支を確認した
- □ 勤務予定表と資格関係書類を指定担当窓口に確認した
奈良市以外で開業する場合は奈良県、奈良市内で開業する場合は奈良市が指定申請の窓口です。人員配置は、具体的な職員の資料と勤務予定をそろえて相談しましょう。奈良県の申請案内、奈良市の申請案内
子どもたちへの支援を続けられる体制を、一緒に考えましょう
人員配置は、申請書の人数を埋めるためだけのものではありません。
子どもたちが安心して通えること。保護者の相談に向き合えること。そして、職員が無理なく働き、学び続けられること。その土台となる大切な準備です。
みのり行政書士事務所では、児童発達支援・放課後等デイサービスの開設に向けた要件確認や、指定申請の準備をサポートしています。
「採用予定の職員で配置基準を満たせるか知りたい」
「資格や研修の書類を、何から確認すればよいか分からない」
そんな段階から、お気軽にご相談ください。

※本記事は2026年9月29日時点で確認した法令・公表資料に基づく基本的な解説です。実際の指定申請では、事業形態や支援対象、兼務の状況などに応じて、最新の条例・通知・指定権者の取扱いをご確認ください。



